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整形外科は小児の運動器疾患を対象にした外科系診療科です。手術を治療の柱として診療を行っていますが、実は意外なほど切らない治療が多いのも整形外科の特徴です。とくに当科ではストレッチ、ギプス、装具など痛みを伴わない治療を積極的に選択してきました。一方、必要になれば手術療法を選択することになりますが、成長期の骨格は常に変化のなかにあるため、どの時期に、どの方法で、その時点ではどの程度まで手術で対処するのか、その判断が最も重要になります。骨格の成長完了までに複数回の治療が必要になる疾患もありますが、最善の治療結果を目指して、ご本人ご家族と一緒に丁寧に粘り強く診療していきます。

先天性内反足、先天性股関節脱臼、筋性斜頚、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、ブラント病、O脚、X脚、内また、小児外反扁平足、側彎症など

四肢変形・脚長不等

先天性脛骨欠損症、先天性腓骨形成不全症、片側肥大症、片側萎縮症、骨折後四肢変形、骨端線損傷による四肢短縮・変形、先天性四肢変形・短縮、先天性脛骨偽関節症など

骨系統疾患

骨形成不全症、軟骨無形成症、くる病、骨幹端異形成症、脊椎骨端異形成症、多発性骨端異形成症など

小児神経疾患

脳性麻痺、二分脊椎、分娩麻痺、シャルコー・マリー・トゥース病、神経線維腫症など

先天性内反足へのポンセッティ法

生下時からみられる内側に曲がった足部の変形です。変形をやさしくストレッチした後にギプスで治療します。これを4~6回繰り返して矯正されたら装具で治療を続けます。アキレス腱が固い場合には点滴針で腱を伸ばす手術を行います。内反足は再発性が高いので成長完了まで経過観察が必要です。年長になってからの治療法もさまざまに準備していますが、成長完了時点でよい足であることが大事です。

小児股関節脱臼へのリーメンビューゲル法

生下時から生後数か月の間に発生する股関節の脱臼です。一般的に、股の開きが悪いこと、秋冬生まれの女児の赤ちゃんであること、ご家族に股関節の手術歴があることがリスクファクターになります。お近くの先生に超音波検査(エコー)でご診断いただき、脱臼が疑われたときに当科を紹介していただきます。リーメンビューゲルと呼ばれるベルトでできた装具で治療します。脱臼整復が難しい場合もあり、牽引治療や手術治療を行うこともあります。一方、脱臼がなく骨盤の骨が小さいだけの場合には臼蓋形成不全と呼ばれ経過観察だけで済むこともあります。

筋性斜頸への治療

新生児期には頚部の腫瘤で、乳幼児期以後だと首の曲がりで紹介になります。小首をかしげた変形で、固くなった首の筋(胸鎖乳突筋)と反対側へ倒すこと(側屈)が困難、かつ同側へ捻ること(回旋)が困難です。ほとんどの例で自然治癒しますが、ごく一部に難治性を示し手術が必要となる場合があります。斜頸のまま長期間経過すると首の曲がりに加えて顔面のゆがみ(顔面側彎)と背骨の彎曲(脊柱側彎)が合併して問題となります。

ペルテス病への装具療法

股関節の骨(大腿骨頭の骨端)が、原因は不明なのですが、骨壊死を起こす病気です。就学前後の時期の男児に好発します。壊死した骨が吸収された後、同部に骨が再生して自然治癒します。しかし治療上の問題は骨吸収から再生完了までの期間、骨成分が無いため荷重によって骨頭が潰れて変形してしまうことにあります。これは重症例では数年かかり、長期の荷重制限が必要となります。このような骨の回復を早める方法は現在の医学にはありませんので、辛抱強く治療することが大事です。はじめは牽引やギプスを行い、関節が柔らかくなったら装具へ変更します。当科の治療成績は良好ですので、時間はかかりますが、正常な形での治癒を望める入院での治療をお勧めしています。

四肢短縮への骨延長手術

生下時や成長過程に四肢の大きさの左右の違いに気づかれることがあります。とくに下肢の脚長不等は脚の問題だけにとどまらず、立位では骨盤が傾き脊柱の曲がりを二次的に生じて姿勢の変形につながります。小児は背が低いためたとえ1cmの脚長差でも体は大きく傾くため、幼少時から靴への補高で脚の長さを揃えておくことが重要です。一方、現在の医療技術では 3 cmを超える重症例でも骨延長手術で治療ができるようになりました。患者さんご自身の組織再生能力を利用して、骨をどこからも取らずに、骨を伸ばす手術はかつて整形外科医の夢でした。当科では25年前からこの治療法を導入し多くの経験を重ねてきました。

四肢変形への変形矯正手術

四肢の骨や関節に変形があり矯正手術が必要になる場合があります。変形の種類・程度や年齢により多様な手術があります。小児では骨成長を利用したエイトプレート法など小侵襲で有効な治療法も行われます。さらに当科では骨延長手術を経験するなかで、創外固定法を利用した高度な矯正も経験してきました。変形矯正は患者さんそれぞれで状況が異なりますので、完全にオーダーメイドの手術プランを立てる必要があります。小児期には今後の成長による症状の増悪や自然軽減をも念頭に置き、骨成長完了を予想しながら、治療時期や治療侵襲を十分な時間をかけて検討していきます。

足部変形への矯正手術

先天性や麻痺性などさまざまな原因で足部変形を生じることがありますが、たとえ重症の変形に進行しても手術により治療が可能です。足部の筋腱の延長術や移行術が基本的な手術手技ですが、思春期以降は二次的な足根骨の変形を合併してしまうため骨手術の併用が必要です。個々により治療内容は異なりますが、可能な限り、成長完了となる、具体的には中学2年生ぐらいの時期に完全な矯正が得られるよう治療プランを立てていきます。逆にそれまでは大きな手術を極力避けて、手術瘢痕の少ない、柔らかい足を温存します。そのために途中経過ではギプス治療や装具治療や小手術などを繰り返し行うことになります。生涯使える丈夫な足を作るためですので慎重に丁寧に治療していきます。

低身長への脚延長術

先天的な疾患によって十分な身長が得られないお子さんがいます。成長完了時点で 150 cm台以下にとどまる場合に平均身長の -2SDを下回る低身長と診断されます。骨延長手術の応用として両大腿延長術と両下腿延長術は結果的に身長増加が得られます。かつて不可能だった治療を提供できるようになり、私たちにとっても喜ばしい夢の技術といえます。しかしこれは大変に負担の多い治療でもあります。両下肢の骨切り手術、創外固定器の装着と経皮ピンのケア、感染リスク、長期間の入院など多くの苦労があります。25年前から多くのスタッフとともにこの技術を共有し、難しい局面も乗り越えてきました。病棟生活、学校生活ができるだけ快適に過ごしてもらえるよう患者さんをみんなで支えていきます。

麻痺性疾患へのボトックス治療、筋腱解離術、腱移行術

脳性麻痺や二分脊椎では変形や脱臼などへの治療が必要になる場合があります。当科の前身である宮城県拓桃医療療育センター 60年の歴史のなかで小児整形外科であるとともに小児リハビリテーション科としての知識・技術を磨いてきました。保存治療であるリハビリテーションだけでは対応困難となった痙縮や拘縮に対しては整形外科的な治療が必要となります。以前は筋腱の延長術や移行術など手術治療が中心でしたが、2001年以降ボトックス治療を導入したことにより保存治療と手術治療の中間といえる治療法を提供できるようになりました。どの時期にどの治療法が適切なのかの判断は決して容易ではありません。乳幼児期から成長完了まで長く診療を継続していくなかで、必要な治療法の提案や実施を行っています。

落合 達宏 
(おちあい たつひろ)

職名 科長
診療領域
専門領域
小児整形外科・小児リハビリテーション科
資格等 東北大学臨床准教授・非常勤講師
東北医科薬科大学臨床教授・非常勤講師
日本整形外科学会認定 整形外科専門医・指導医
日本リハビリテーション医学会認定 リハビリテーション科専門医・指導医
日本小児整形外科学会(理事)
日本足の外科学会(評議員)
日本小児股関節研究会(幹事)
日本靴医学会(評議員)
日本脳性麻痺の外科研究会(幹事)
日本二分脊椎研究会(世話人)
日本ボツリヌス治療学会(理事)

水野 稚香 
(みずの ちか)

職名 部長
診療領域
専門領域
小児整形外科・小児リハビリテーション科
資格等 日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本リハビリテーション医学会認定 リハビリテーション科専門医
日本整形外科学会 リウマチ認定医
産業医

小松 繁允 
(こまつ しげまさ)

職名 医長
診療領域
専門領域
小児整形外科・小児リハビリテーション科
資格等 日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本リハビリテーション医学会認定 リハビリテーション科専門医

川又 裕輝 
(かわまた ひろき)

職名 後期研修医

 

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